さらに、エレンが今は全く別人になったリチャードに気付いたことも、あんなおしゃれなお店を持っているエレンの憧れの人がシースルーのフリルシャツを着ていたことも、全部ひっくるめて驚きで、よけいに笑いが止まらなくなってしまった。
そのうちに、体をくねくねとよじりながら爆笑するあたしたちにリチャードとエレンが気付いて、不思議そうにこっちを見ていたけど、あたしたちは必死で違う方向を向いてごまかした。
だけど、その中に1人だけ全く笑っていない人がいた……
「あの、メル? どうしたの?」
メルはあたしたちが笑っている間も、ずっとぼーっと突っ立っていた。 「あ、あ。えとメルだよね?初めてだね。どうも、ジェイミー・ブラウンです。よろしく。えと、君とティムのことはモーモから聞いてて少しは知ってたんだけど……」
そのメルが釘付けになっていた相手のジェイミーは、やっとその鋭い視線に気付いてぎこちなく挨拶した。
「メル? なに? どうしたんだ?」
ほとんど瞬きもせずにジェイミーを見続けるメルに驚いて、ティムは彼女を覗き込んだ。
あたしはやっとその理由に気付いた。きっとティムとジェイミー本人以外の全員が分かっただろう……この後の展開も予想が付くけど、あたしはなんとなくそれを楽しんで見守っていた。
「ティム。わかんない?彼がモモの彼氏だよ」
チコが面白がっているようにティムに告げた。
「え? なにが? ああ、どうも。ティムです」
ティムは自分の彼女を誘惑したのか? っていうような疑わし気な顔でジェイミーととりあえず握手した。だけど、その表情がみるみる変わって行くのが分かった。輪にいるメル以外のみんなの視線が、そのティムに集中している。
「……え? ちょ、と待って……ジェイミー? ジェイミー・ブラウン?」
そこで初めてティムは気付いた。
また誰からかくすくす笑いが始まって、あたしたちはまた笑いを止められなくなってしまった。
そこからはまるで初めてジェイミーがスナッグに来た日を再現しているかのようだった。
あたしたちがそうしたのと同じように、メルとティムはジェイミーにニットキャップスが大好きだっていう話を熱く語っていた。
そしてジェイミーはまた頬をピンク色に染めて、ときどき恥ずかしそうにもじもじしながらその話を聞いている。
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