ロックンロールとエトセトラ  
  2月 コンシダレイション
consideration/ REEF
 
   
  #1 バレンタイン モモカ
 

 2月14日。

 スナッグのバレンタインイベント。
 あれから3週間が過ぎた。

 あの冷たい巻き毛や頬の感触も……思い出さない日は1日もなかった……。
 それでも、今日彼が来るなんてことは、ありえないってちゃんと分かっている。

 あの日病室に置いて来たチケットが、たまたまポケットに持っていたのが、どうしてよりによって今日のものだったのか。
 考えると悔しくてたまらなくなる。
 バレンタインデーはきっとレイチェルと過ごすんだろうし。
 そうでなくてもニットキャップスはレコーディング中できっと今はすごく忙しいはず。  それ以前に、ロックスターの彼がこんな名前も聞いたこともないようなバンドのライブを見に来たりする訳がないんだから。
 そう思って自分を納得させようとしたのに、よけいに胸が苦しくなった。
 そしてやっぱり、ジェイミーは来なかった。
 やっぱりスターはスターなんだね。
 手を延ばしたって、届かないのかもしれない。
 そんな弱気をなんとか打ち消そうと、あたしはひたすら毎日ギターを鳴らし続けた。
 ミミコがよく言うみたいに。

『いいの、傷付いたら詞にしてやるから。ネタがひとつ増えたって思うもん』

 それは完璧なミミコの負け惜しみだったけど。
 だけどミミコは実際にそうしているし、あたしも少し見習った方がいいのかもしれない。

 
 

#52月#2

 
  もくじに戻るノベルスに戻るトップに戻る