「はい、はい、大丈夫です。はい、絶対行きます。ありがとうございました」
電話を取ったチコが緊張した面持ちで受け応えをしている。ただごとでは無い雰囲気で、ミミコとあたしは息をつめて見守っていた。さっぱり状況が掴めない。
「やったよっ」
チコが笑顔でくるっと振り返った。
「誰?」
「どうしたのっ?」
ミミコとあたしの声が重なる。
「ライブ、出来るんだって!『ニュートラル』っていうライブハウスのブッキングマネージャーからだったの。デモテ聴いて気に入ってくれたんだって。たぶんティムが働いてたとこだと思うんだけど。来週の月曜日にちょうどキャンセルのバンドが出たから、出てみないかって。その出来しだいでは、これからも出演してほしいって言われたよ」
「やったあ!」
あのベンのクビ宣告からすでに1ヶ月半も経っていた。あたしたちは後ろ向きにならないよう、腐らないよう、必死で練習に励んでいた。
あえて金曜日にスナッグに足を運んでは、自分達を奮い立たせた。
だから、準備は整っていた。
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