ニュートラルは、まさにこれぞ外国っていう雰囲気だった。っていうか、あ、外人がいる、っていう空気で満ちていた。
PAのティムとブッキングマネージャーのジェフ以外、全員あたしたちを値踏みする目で見てくる。ものすごく感じが悪い。それに気付いていないふりをするのが大変なくらいだった。
ほんとに今まで、あたしたちはスナッグでぬくぬくと見守られていたんだって、よおく分かった。
出演バンドは全部で4つ。
サウンドチェックはナシでリハで2曲演奏する。逆リハで、出番がトップのあたしたちが最後になる。
3番目のバンドはガレージバンドで、見た目は破けたジーンズにジャケット、ネクタイで、どこかで聞いたことのあるような曲ばかり演奏していた。
誰かのカバーって訳でもないけど、どっかで聞いたことがある……
「どう見てもストロークス好きすぎだよねっ」
ももちゃんが耳元で笑いながら囁いた。そう言われてよく見てみると、それぞれのパートのメンバーが、それぞれにストロークスを外見から模倣しているのがよく分かった。
2番目のバンドはどう見ても15、6歳の若いバンドで真っ黒に染めた髪の毛を天井に突き立てるように尖らせたボーカルの男の子は、リハですでに気合いが入りまくりで、床に這いつくばって『世界は腐ってる〜』と歌っていた。
彼の鼻の頭のつぶれたニキビがすごく目に付いた。
そんな若い子たちも、あたしたちをじろじろと遠慮なく見てくる。
チコはいらいらと煙草をひっきりなしに吸っている。あたしはチコが何か言うんじゃないかと思って、そっちに気を取られていた。
「おはようございます!」
その時、ドアが勢いよく開いて、トリのバンドが遅れて到着した。
「遅れてすいません!」
男の人が何人も、元気にあいさつをしながら、どかどかばたばたと入って来た。メンバーはみんなで5人。あと、スタッフらしき人が1人。
みんなすぐにステージに上がって準備を始めた。その間ティアドロップの黒いサングラスをかけた人はずっと大声で陽気にジェフと話していた。それから楽器の準備が整うと、彼はサングラスを外してステージに上がった。彼がボーカルらしい。
あたしはほっとした。なんだか、このジャクソンブレイクっていうバンドが来た途端、場の空気が一気に変わった。
なんだか、すごく陽のオーラを出している人たちだった。
それに、彼らはステージでリハを始める時初めてあたしたちに気付いたけど、特に嫌な顔はしなかった。
それだけで、ちょっとそのバンドが好きになったくらいだった。
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