ロンドンといえば、セックスピストルズにローリングストーンズ、フー、クラッシュ、ジャムにストーンローゼス、シャーラタンズにマニックストリートプリーチャーズにブラーにオアシス、ブルートーンズにリーフにクーラシェイカーにザ・ヴァーヴにトラヴィスにコールドプレイの街。
今は過ぎ去りしブリットポップの街。
挙げれば切りが無い程の大好きなバンドの街。
そして映画、トレインスポッティングにベルベットゴールドマインにヒューマントラフィックの街。
ロックで尖っていて。そして、あたしを導いてたくさんの世界を見せてくれた聖人のごときスター達が住む、まさしく聖地だ。
ロンドンだけじゃない、マンチェスター、リバプール、ウェールズ。イギリス全土に何十人、それ以上の憧れの人が住んでいる。
あのノーキングのイアンも、ザ・ニットキャップスのジェイミーだってこの街のどこかで、今息をしてる。
今あたしはそこに立っていて、どこかでイアンが吐き出した空気を吸っている。そう思うだけでもう……胸がいっぱいになる。
「ミミコ、何さぼってんの?」
3階の窓から顔を覗かせたももちゃんが、ハタキを振り回して叫ぶ。
「ごめんごめんっ、すぐ戻るよっ」
あたしは笑顔で手を振り返した。
あたしの担当は1階の掃除。だけどさっきから集中できなくって、手を休めては玄関の外に出てあたしたちのお城を見上げていた。ボロボロで、階段も少し抜け落ちていてカビ臭くても、それでもこれはやっぱりお城だよ。
ついに……ついにやったんだね。
たぶん、あたしはタイミングにも恵まれてラッキーだった。
今ならそう言っても、ももちゃんは許してくれるんじゃないかと思う。
あの夜から5年弱。今あたしたちは、夢の街ロンドンにやっと辿り着いた。
何十回、きっと何百回繰り返し夢見た。
ミルレインボウ。虹の、たった千分の一の小さなかけら。
ちっぽけでも、その光はどこまででも届くはず。
そう信じて今までやってきた。
きっとイアンにも届く。
「ミミコー、まださぼってんの?1階終わったんなら手伝ってよ、バスルーム最悪なんだからっ!」
2階担当のチコが顔を出した。
「やだよ、ジャンケン負けたでしょ」
あたしは笑いながら忙しいふりをして、ドアの中へ戻った。
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