ロックンロールとエトセトラ  
  第1章 オトメとエトセトラ-11  
   
    1999年 6月 ミカコ   
 

※  たぶん実現はしないかも知れない
 俺がこれまで抱いてきたどんな夢も
 でも今は泣いてる時じゃない
 今こそ強くならなきゃならないのに
 君は俺に似すぎているのかも知れない
 俺達には連中に見えないものが見えるんだ
 君と俺だけは永遠に生き続けられる
 君と俺だけは永遠に生き続けられる

※出典 oasis LIVE FOREVER アルバムDefinitely Maybeより

 

 声を張り上げないももちゃんの歌は、前にライブで聞いた時よりもやさしくって悲しくって、あたしの胸をぎゅうぎゅう締め付けた。
 後で思った。失恋したばかりの友達にあんな歌を歌わせるだなんて。なんてひどい事をしたんだろうって。
 曲を終えると、顔を見合わせてふたりでにんまりした。どちらの目もうるんでいた。その理由は違っただろうけど。
「ミミコっ、なんでッ?どうしたの?そのベース、すごいっ、練習したの?」  取り乱したモモちゃんの予想以上の反応が、あたしの気分を良くした。
「ねえももちゃん。あたしと一緒にワールドツアーしない?」
 また固まったももちゃんに、その壮大な、そしてシンプルな計画を話した。  ももちゃんは、あたしが思っていたよりも派手にド素人のあたしに同意してくれた。ふたりで盛り上がってももちゃんはうちに泊まった。

 今思えば、抜けるバンドのライブの前日で、ももちゃんは少しヤケクソだったのかもしれない。

 それでもそんなことはあたしにはどうでもよかった。  ももちゃんと一緒のスタートラインに立てたッ。
 そして、あたしはあのキラキラした世界目掛けて走って行くんだ。
 そんな気持ちがもりもり湧いてきて、体中に力が漲っていた。
 テンションの上がりまくったあたしたちは、その一晩でバンド名を考えて、それから2分の短い曲まで作ってしまった。
 2人とも生まれて初めての作曲作業だった。
 そして思った。なあんだ、作曲って簡単なんだ。
 ただ、その曲を自分以外の誰かが気に入ってくれるかどうか。結局はそれに尽きる訳だけど。それでも、ふたりが好きな曲はちゃんと自分たちで作れることが分かった。


「あたしたちって、すごいよね、ね、ね、」
 2人で自画自賛しながら、お互いを気色悪いほど褒めちぎり合った。
 そして、あたしたちミルレインボウが生まれた。

 
 

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