なにもかもが完璧に思えた。そのくらい、最高のライブだった。
ライトに照らされて、みんなの顔がはっきりと見えた。1曲目の『G・O』に握りこぶしを上げる人、『ブルースカイ』を一緒に歌ってくれる人。よく見る顔の人だけじゃなくて、フロアの奥、ロッシのいるブースの方まで、ちらちらと上がる手が見えた。
スナッグはすごく小さい。今までライブをしたどのライブハウスよりも。それでもそんなことは関係なくて、あたしは初めて手ごたえを感じた。
あたしたちが発信するだけじゃない。フロアからなにか物凄いパワーが返ってくる。
いつもシャイな常連さんたちも、その熱に乗せられてかいつもよりも激しく体を揺らしていた。
あたしはそれに負けるもんかと思って、腕をしっかり動かして、気合いを入れてコーラスをして、それからいっぱいジャンプした。
ももちゃんの歌にもチコのドラムにも力が漲っていた。ふたりがあたしと同じ事を考えているんだってすぐに分かった。
今までで一番の出来だった。
こんなにも気持ちのいいライブは、生まれて初めてだった。
ライトが消えると、あたしたちは黙々と片付けをしてすぐにバックステージに入った。
ドアを閉めて外の音が遮られた瞬間、3人とも一斉に絶叫した。
「すごかったよ! ね、ね、なんかすごかった、」
あたしは興奮しすぎて自分でも何を言っているのか分からなかった。
「今日のお客さん最高だったよ! それにあたしたちも最高だった!」
めずらしくチコが自分たちを誉めた。
ミルレインボウ最高、って言うのは絶対にあたしかももちゃんで、いつもチコはそれに静かに頷いているだけだ。
「見た? ジェイミーがアンディの隣に立っててね、2人揃ってめがねだったから、あたし笑い堪えるの必死だった」
あたしがももちゃんの顔を見て言うと、ももちゃんは微笑んだ。
「それも結構前の方にいたでしょ? あれ昨日気に入って持って帰ったの」
「で、ジャンプしすぎてメガネ飛んだんだよ! 見たッ?」
最後にチコがそう言った瞬間、あたしたちは一斉に爆笑した。息が出来なくなって、お腹がちぎれるかと思うくらいだった。
あたしたちは途切れることなく、最高にハイになって喋り続けた。
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